大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福島地方裁判所いわき支部 昭和43年(借チ)3号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕

〔主文〕

一、別紙目録一記載の建物につき、同建物の一、二階を別紙八番旅館増改築模様替工事設計図の一階平面図の赤斜線部分に木造の車庫、ホール、玄関、調理室の改築模様替すること、同二階平面図の赤斜線部分に木造客室三、ホール、洗面便所を増築することを許可する。

二、本裁判確定の日より地代を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四〇円(月額金二、二二六円―円未満切捨)の割合に変更する。

三、申立人は相手方に金一〇〇、〇〇〇円を支払え。

〔理由〕

一、本件申立の要旨

申立人は、「別紙目録一記載の建物(以下本件建物と称す)につき主文一項のように増改築することを許可する」との裁判を求めた。

二、申立の事由の要旨

申立人は相手方所有の別紙目録二記載の土地(以下本件土地と称す)を建物所有の目的で賃借しているが、本件土地付近一帯は、いわゆる温泉旅館を主とした商店街で近時とみに繁華をきわめている。そこで申立人も昭和四一年七月一日相手方の承諾を得て従来の使用目的住宅を温泉旅館とし、その経営をして現在に至つているが、現在の一階車庫は狭隘であり、かつ客室も不足し、帳場も痛んでいるので、相手方に対しこれが増改築の許可を求めたところ相手方に拒否されたので承諾に代わる増改築の許可の裁判を求めると述べた。

三、相手方は本件土地の借地期間満了日は昭和四四年一二月三一日であり、相手方は右期間満了後は本件土地を自己使用する目的があるので増改築の許可に応じられないと述べた。

四、当裁判所の認定及び判断

申立人、相手方の審問及び当裁判所の検証の結果及び本件記録の資料によると、

(イ) 申立人の母が昭和一四年に本件建物を購入し、じ来申立人が居住して来たものであるが、その当時における本件土地の原始土地賃貸借契約の内容は不明で、当事者も借地残存期間が幾何あるか等ということには無頓着で経過して来たこと、昭和三九年頃、相手方の要望で申立人との間に賃貸借契約書が取りかわされたが、右契約書によると、昭和三九年一月一日から同四一年一二月三一日までの三ケ年間と規定されていたことが認められ、その後は、契約書も作成されていないことがうかがわれる。しかして、右三ケ年の期間の定めも特段の事情なき限り借地法一一条に違反する無効のものである。従つて、本件土地の残存借地期間が何年あるかは今正確には断定できないが、申立人が本件土地につき現に借地権を有していることは明らかである。とすると、相手方が近き将来自己使用の正当事由があること(具体的な主張も証明もないが)の故を以つて申立人の増改築許可の申し入れを拒むことは理由がない。

(ロ) 本件土地付近一帯が温泉旅館を主とした商店街で近時とみに繁華していること。

(ハ) 申立人は現在小規模の温泉旅館を経営しているが、右町の発展に伴ない来客も多く本件建物を増改築して経営の改善、生活の繁栄を図ることは自然の勢いであること。

以上認定の事実によると、申立人の本件申立はその増改築の態様に照らし本件土地の通常の利用上相当というべきである。

五、付随裁判

右増改築の結果、本件土地の利用価値も上昇し、本件建物の耐用年数も必然的に延長されるので、増改築禁止条項により相手方の有する利益を考慮し、当裁判所は鑑定委員会の意見を聴いた上地代を本裁判確定の日より3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四〇円(月額金二、二二六円―円未満切捨)の割合に変更することとし、なお増改築の許可に対する財産上の給付については、鑑定委員会の意見によれば、その必要がないとの意見であるが、申立人において増改築費約二、〇〇〇、〇〇〇円の五パーセント位は御礼として提供してもよいとの意見を表明しておるので、当裁判所は右提供の申入及び前記の事情及びその他一切の事情を公平に考慮した上申立人に対し金一〇〇、〇〇〇円の給付を命ずる。

六、結論

以上借地法八条の二第二、三項により主文のとおり決定する。(宇佐美初男)

別紙目録一

いわき市常磐湯本町笠井三番地

家屋番号 三番の一の二

木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建 56.19平方米(17坪)

現況

木造瓦葺二階建

一階 89.25平方米(27坪)

二階 39.66平方米(12坪)

別紙目録二

いわき市常磐湯本町笠井三番地の二

宅地 357.26平方米(108坪)のうち

183.99平方米(55.66坪)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!